百年前の横浜の谷戸をそのまま封じ込めた舞岡公園の楽しみ方

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舞岡公園ってどんなところ?

舞岡公園は百年前の横浜の谷戸をそのまま封じ込めた自然公園です。横浜市が管理し、地元の市民団体によって運営されています。

自然を大切にしながら、訪れる人にも配慮して、歩道、トイレ、休憩場所などが整備されています。急速に進む住宅街の開発から自然を守るため、地元と市が協力して計画を進めて1996年にオープンした公園です。

古谷戸の里

公園と言いながら、園内にはすべり台もブランコもアスレチックも、自販機もゴミ箱もありません。

しかし、ここには古民家や現役で使われる水車小屋、炭焼き小屋があります。無農薬・有機栽培の水田にはザリガニやドジョウが住んでいて、それを食べに鳥たちが集まります。

梅雨にはホタルが舞い、黄昏時に森を歩くと「ホッホー、ホロスケホッホー」と、遠くにフクロウの声が聞こえます。

水田の脇に腰を下ろしてお弁当を食べるとき、日本人に生まれてよかったと心から安らぎを感じます。

古谷戸の里の古民家

古民家の中に展示される農家の生活道具

私は、コロナ自粛で外出できなくなってから、体と心の健康のために、週に何度もこの公園に出かけて写真を撮るようになりました。

このブログは3年間の舞岡の自然の記録です。ここを訪れる花や野鳥ファンの方の参考になれば幸いです。どこでいつ頃どんな鳥や花に出会ったのか、思い出す限り書いていますので、地図を参照してぜひ訪れてみてくださいね。

茅葺き屋根の古民家のある古谷戸の里では、年間通じてさまざまなイベントが行われます。田おこしや田植え、稲刈りなどの稲作体験や、芋掘り、案山子祭り、餅つき大会、古民家宿泊体験、夜の舞岡公園探検など、大人はもちろん、現代の子どもたちにとってもかけがえのない体験になることでしょう。

※舞岡公園へのアクセス、行事の案内などは公式ホームページでご確認ください。

舞岡の冬

野鳥スポットとして有名な舞岡公園の四季を語るときは、やはり野鳥の種類がとても多い冬から始めたいと思います。

年の始めを寿ぐのが水田の横の白梅です。メジロヒヨドリたちが大喜びで蜜を吸いにやってきます。

白梅に飛んできたメジロ

古谷戸の里の近くの水車小屋周辺は野鳥天国です。

ハンの木の実を食べているのはアカハラ

アカハラシロハラが、地面に積もった落ち葉をかき分けながらミミズなどを探している光景によく出会います。

餌を探し回るアカハラシロハラは全体に白っぽいです。

シジュウカラはどこででも見かけます。

2月、水田が凍る頃、野鳥たちはひもじさのピークを迎えます。熟れたコマユミの小さな赤い実はメジロヒヨドリの貴重なご馳走です。

コマユミの実

通路で草の実や種を探しているのはアオジのペア。水車小屋辺りに小さな群れでいるのを見かけます。

水車小屋前の草地ではルリビタキ(瑠璃鶲)の雄が何度も木から降りたり上がったりして餌を探しています。クモやムカデなどの節足動物が大好物です。

カメラマンに一番人気なのは、水車小屋脇の湿地帯と反対側の草地です。そこにはクイナヒクイナシギタシギアリスイ(私はいまだに会えず)などがいて、連日カメラマンの大砲レンズがずらりと並んで大賑わいです。

クイナ(水鶏)枯れた草むらの中では完全な保護色で、じっと目を凝らしているとやっと見つけることができる鳥です。羽の模様がシックです。

ヒクイナ(緋水鶏)その名の通り緋色のクイナ。お腹が赤く目も赤く、とてもユーモラスな風貌です。夏にも宮田池の葦の茂みで時々出会います。歩き方がとてもひょうきんです。

タシギ 顔にストライプがあり、とても面白い顔をしています。長い口ばしを水の中に差し込んで泥の中のミミズやムカデなどを食べています。

さくらなみ池に行くと、まん丸いボールが2個。ひなたぼっこ中のカルガモです。

カワセミ(翡翠)には宮田池さくらなみ池かっぱ池水田辺りに行けば会えます。

コサギも冬の常連さん

おおばなの丘辺りでは時々ツグミを見かけます。3月には南に渡ってしまうので、会えるのは冬だけです。真冬のある朝、凍えそうになりながら双眼鏡を覗いていた時、ふと振り返ると背後でツグミが興味深そうにこちらを見ていました。「おばちゃん、何してんの?」と言わんばかりです。この愛嬌たっぷりの鳥が大好きです。

タイワンリスは冬眠しないので、食べ物の少ない冬場、お腹がすくと木の樹皮をかじって木が枯れたりします。繁殖力が強くすごい勢いで増え、野鳥の卵やヒナも食べられたりしています。

孵化したばかりのメジロのヒナの巣が、ある日空っぽになっていました。「リスが食べちゃったよ」という話も聞きました。

木の皮をかじるタイワンリス

舞岡の春

3月を迎えると劇的に風景が変わり、花が次々と咲き谷戸を彩ります。

サンシュユ(山茱萸)は秋に真っ赤な実が実り、漢方の生薬として使われます。

満開のサクラに集まるメジロたち。チーチーチーという鳴き声が喜びに満ちているように聞こえます。

巣立ったばかりのガビチョウが賑やかに、いや、狂ったようにさえずります。ガビチョウはちょっと困ったちゃんです。繁殖力が強すぎて数が増え、その鳴き声が森を席巻してしまい他の鳥の声が聞こえなくなるほどです。

シデコブシ(ヒメコブシ)別名スター・マグノリア。ビロードみたいなつぼみが開くと、バレリーナのように可憐な花が現れます。

訪れるたびにどんどん主役の花が交代していきます。春一番の畑の主役はホトケノザ(仏の座)で、一面ピンクに彩られます。

春のお楽しみは日陰に咲くスミレの群生

そしてセリバヒエンソウが咲き出します。芹葉飛燕草という名のとおり、飛んでいる燕のような姿です。

こちらはクサフジ(草藤)。畑を一面に覆い尽くす美しい藤色の花です。

宮田池ではアカメガシワの新芽とカワセミの女の子。もうすぐ結婚出産のシーズンがやってきます。

この時期、園内の休耕田に突然お花畑が出現して驚かされます。ハハコグサレンゲの畑をモンシロチョウが一斉に舞う光景は夢のようです。

そして休耕田の周りには一面にナガミヒナゲシ(長実雛芥子)が現れます。ヒナゲシとの違いは実が長細いことと、花が小ぶりな所です。

ウグイスカグラ(鶯神楽)の花。6月には甘くておいしい真っ赤な実を付けます。一説によると、この実をウグイスがついばむ姿が神楽を踊っているように見えることが名前の由来とも言われています。

古谷戸の里の周りに咲き乱れるヤマブキの散歩道

「こっちこい、こっちこい!」と叫ぶのはコジュケイ。お散歩の人がまだ通らない早朝に行くと、水車小屋の辺りで出会えます。ペアで行動していますが、やがて子どもを連れてゾロゾロと歩く姿に出会うかもしれません。

草の実をついばむコジュケイ

5月になると新緑が瑞々しく、森は山桜が満開になります。

木々の葉が爆発的に成長

いたる所にガマズミの真っ白な花が咲き、秋には赤く実り、野鳥たちの冬場の救済食となります。

池の周りでクワの実が赤く色づいています。これが真っ黒に熟すと、リスや野鳥たちのごちそうになります。昔は人間の子どもたちのおやつでした。口を紫色に染めながら食べた懐かしい思い出です。

田植えの終わった水田の横にはアジサイ(紫陽花)

カワセミの幼鳥に興味津々のスズメたち。だんだん距離を詰めてくる子スズメたちに驚くカワセミ。

舞子さんのかんざしのように揺れるのはキブシ(木五倍子)の実

宮田池ではノバラの下にカイツブリの姿

カワセミ♂は、卵を抱いている奥さんのために懸命に餌を探しています。ちなみにカワセミの雄雌の見分け方は簡単で、クチバシの下側が黒ければ雄、赤ければ雌です。

ヤマボウシの真っ白い花、秋には赤い実がたわわに実りますが、野鳥はあまり食べないようです。

秋に実ったヤマボウシのカラフルな実とシジュウカラ

オカトラノオの群生も古谷戸の里周辺の斜面を覆います。

ホタルブクロ 

鮮やかな黄色い鳥はキビタキ。毎年中丸の丘周辺で朝から夕方まで美しい声でさえずってくれるのですが、今夏(2023年)は来ていないようで寂しい限りです。

カラタチの花と実。秋には北原白秋の歌のとおり金色になります。

ニンドウ(忍冬)の花は金銀花とも呼ばれ、とても良い香りがします。漢方の生薬としても有名です。

梅雨入りすると一雨ごとに植物が成長し、森の生き物たちが活発になります。

熟したクワの実を食べるハシボソカラス。一本の木に5羽くらいが集まって夢中で食べていました。よほど美味しいと見えます。

さくらなみ池ミズキの大木の下、幼鳥に小さな魚を食べさせているカワセミお母さん。時々大きな魚を与えてしまって、幼鳥が飲み込めず目を白黒させている姿を見かけます。

ニホンカナヘビ カナヘビとトカゲの見分け方。カナヘビはトカゲよりずっと細く、シッポも長く、体が鱗で覆われてザラザラしています。トカゲのような光沢がありません。

この時期はアオダイショウが池を泳いでいたりします。カエルや、時々カワセミの幼鳥も食べられてしまうそうです。アオダイショウは無毒ですが、草むらに入るときは長靴をお勧めします。

ガビチョウが食べているのはコウゾの実。木苺に似たつぶつぶの実が甘くておいしい。

この時期によく見かけるウグイスの幼鳥。普段ウグイスは警戒心がとても強く、藪の中に隠れて滅多にお目にかかれないのですが、デビューしたての幼鳥は「右も左も分かりません」といった風情です。

湿地にはユキノシタが花ざかり。この葉っぱは天ぷらにすると最高です。(もちろん公園の動植物は採取禁止)

水田からもみじ休憩所に抜ける道はアジサイが満開になり、梅雨の時期のお楽しみです。

湿地帯にはユキノシタ。独特の花の形がとてもユニークですね。

ヤブカンゾウ(藪萱草)

ドクダミシダのコラボ

水田の畦道一面に咲くオシロイバナ

舞岡の夏

古谷戸の里では毎年、案山子祭りで水田に立てる案山子を募集しています。案山子コンテストも行われ、工夫を凝らした楽しい案山子が水田にずらっと並びます。申し込みは古谷戸の里まで。2023年度は7/22(土)〜9/10(日)まで。

宮田池ではウシガエルがたくさん生まれて大合唱

この美しい花はヘクソカズラ。びっくりするようなネーミング!

水面に揺れるヤナギの枝

宮田池に住むカルガモ。この池にはほぼ通年カルガモが住んでいて、周りの水田に餌を獲りに出かけたりしています。

カラスビシャクの花 まるで蛇が舌を出して立ち上がっているような不思議な花です。

王様の冠のようなヤブカラシの花。嫌われ者の代表みたいな植物もこんなに端正な花を咲かせます。

威風堂々のヤマユリの花は森の女王の風格

舞岡の秋

秋、稲穂にとまるシオカラトンボ

ヒナにバッタを運んできたホオジロ

水車小屋の横の湿地で、モヒカン頭のカシラダカ

古谷戸の里では稲刈りや脱穀が始まります。

脱穀が終わった後に毎年出現するわらの家、呼び方が地方によって様々です。

  • 中国・四国「わらぐろ」
  • 九州「わらこずみ」
  • 東日本「にお」「にゅう」など。

古谷戸の里の古民家の軒下に下がる干し柿が美味しそう

もみじ休憩所モミジは数も多くて見応えあり

空気が清んで雪を被った富士山が見える季節

真っ黄色のお腹がかわいいアオジ

ジョウビタキ(尉鶲)の雄は黒とオレンジ、そして頭がグレーで見つけやすい

ジョウビタキは晩秋に舞岡ふるさと村周辺の休耕田でよく見かけます。ヒッヒッヒッという鳴き声が特徴的。

ジョウビタキの♀は♂よりもかなり地味

宮田池にはオオバンのカップル

水車小屋辺りで餌をねだりに来るヤマガラ

よく見かけるダイサギコサギ

アオサギは公園の常連さん

古谷戸の里では餅つき大会をしてこの一年を締めくくります。

「様々な生き物たちと共にあることを大切に」

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