ウクライナ避難民支援15ヶ月*これからウクライナのボランティアをされる方に

ボランティアの記録

ウクライナから避難民の生活支援ボランティアを始めてから15ヶ月になります。その間の体験が、これから避難民のボランティアをしようとされている方、仕事で避難民と関わろうとされている方のお役に立つかもしれないと思い、このブログを書いています。

ボランティアのきっかけ

2022年6月、知人の所属する団体がウクライナ避難民の身元引受人になったことをきっかけに、「日本に来られる避難民の生活支援ボランティアをやってみませんか」と私たち夫婦にお声がけいただきました。ウクライナ語が話せるわけでもない、英語がそれほど堪能でもない私たちにとって、これは相当のチャレンジでした。

ただ、夫の定年退職に伴い時間的にゆとりができたことと、ほんの少しでもウクライナ避難民の方に直接お役に立つことができたらという思いで、思い切ってお引き受けすることになりました。現在、ボランティアは全部で6人で支援をしています。

基本的に18〜60歳のウクライナ男性は国外に出られないので、避難民のほとんどは女性と子どもです。私たちの団体が身元引受人になっている方々も10代から30代の女性と中高生です。自分の子どもや孫のような年代の人たちを、2023年9月現在で8人受け入れています。

日本に避難してきた若者のほとんどは日本の文化、特に「日本のアニメが好きだから日本に来ました」というケースが多いようです。日本のアニメはロシア語の字幕が付いて、ウクライナの人々もインターネットで見ていたことを知り驚きました。

生活支援の内容

私たちが担当している支援の内容

  • 空港の出迎え
  • ホテルへの送迎
  • 住宅の下見
  • 引越しの手伝い
  • 移民局・区役所・銀行・郵便局などでの各種手続きの支援
  • 買い物のサポート
  • 病院の予約や同行
  • 電車やバスの乗り方
  • アルバイトの面接の同行 etc.

言葉の壁をどうするか

日本に来てから1年が過ぎ、みなさんアルバイトも始めるようになって、かなり意思疎通が図れるようになりましたが、避難当初、主な会話のツールはポケトークかGoogle翻訳でした。

避難民には最初から全員にポケトークが支給されていましたが、スマホを使い慣れている若者たちは携帯の翻訳アプリを使っています。

ポケトークでもGoogle翻訳でも日⇆英なら使いやすいのですが、日⇆ウクライナにいきなり翻訳すると誤訳が多く、正反対の意味に訳されてしまうことがあります。特に長文は難しいので、なるべく短いセンテンスに分けます。

重要なところは逆に変換して、正しく翻訳されているかを確かめつつ会話をします。日本語の特徴で主語を抜かしがちですが、面倒でも主語を入れた方がうまく変換される場合が多いです。

まりこ
まりこ

私もポケトークアプリをiPhoneに入れてみましたが、無料のGoogle翻訳で十分と感じています。

込み入った長文を送りたい場合はDeepLという翻訳アプリを使っています。日本語⇆ウクライナ語でもほぼ完璧に訳してくれます。無料のスマホアプリ(1ヶ月に3ファイルまで・文字数制限あり)もあるので試してみてください。

ウクライナは国土が広いですから、何語を話すかは地域や年代によってまちまちだと思いますが、ほぼロシア語とウクライナ語の両方を話すことができる方が多いようです。中にはロシア語だけ、ウクライナ語だけという方もいます。英語はとても得意な方もいますが、若者はごく簡単な受け答えだけの場合が多いです。いずれの翻訳アプリを使う場合でも、ウクライナ語、ロシア語のどちらで翻訳するのがいいか、ご本人に確認してみてください。

LINEが便利

ウクライナではLINEは使わないようですが、全員にLINE登録してもらうようにお願いし、グループLINEで避難民とボランティアが繋がっていて、何か相談事があると誰かが対応するというシステムになっています。

グループLINEに書きたくないような相談は、個人的にLINEで相談に乗ったりもします。特に病院に行きたい場合は個人的に頼まれることが多いです。

コミュニケーションを取るのには、LINEの会話が一番スムーズです。LINEは英語でやりとりをしています。英語が分からない人も、自分でロシア語かウクライナ語に翻訳して理解してくれているようです。

現在は日本語学校に通って少しずつ日本語が分かるようになってきましたが、なるべく簡単な単語を使って話すことが大切です。

まりこ
まりこ

いつから日本語学校に通学するの?

Elena
Elena

通学?

まりこ
まりこ

いつから日本語の学校に行きますか?

Elena
Elena

ああ!あさってからです。

病院の付き添い

病院に同行するときが一番緊張します。慣れない環境や避難生活のストレスもあるし、戦争で治療したくてもできなかった虫歯や持病の治療に行く場合もあります。

ウクライナ交流センターなどに連絡すると、ボランティアの在日ウクライナ人の通訳さんを派遣してくださることもできるようです。

ただ、急病のときはそんな余裕がないケースがほとんどなので、携帯電話を握りしめて電波が良いことを祈りつつ、一緒に診察室に入ります。うっかり電池切れで冷や汗をかいたこともありました。

まりこ
まりこ

スマホの充電をお忘れなく

診察の時は先生にお願いしてなるべくゆっくり話していただき、それをロシア語又はウクライナ語に変換して本人に伝えます。

問診票はどうしても日本語(まれに英語)で書かなくてはならず、現在の症状、持病の有無、アレルギーや薬の副作用の有無など、重要なことを間違いなく書くために相当時間をかけて、携帯電話を片手に聞き取りながら記入します。

コロナに罹ることもあり、食料品や日用品を数日間は交代で届けたりします。幸いみんな若いので、よほど症状がひどくなければ数日間寝ていれば治るケースが多いです。

病院の予約 避難民が一番苦手なのは電話です。日本語で電話をかけて病院の予約を取るのは相当ハードルが高いようです。代わりに予約を取ってあげる場合も多いです。病院によってはweb予約ができる所もありますが、やはり漢字が多くて自分で予約するのは1年経っても難しいようです。

手術の場合 経験したことはありませんが、万一手術が必要になった場合、病院によってはオンラインでウクライナ語の医療通訳を入れることも可能だということを日本財団の方にお聞きしました。一度相談してみてください。

日本財団ウクライナ支援                          https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/support_ukraine

メンタルケア 生まれて初めての戦争体験、避難生活、慣れない日本での生活、故郷での家族の心配、何をとっても初めてのことだらけです。戦争の収束も見えない現在、眠れない、鬱っぽいなど、心身の不調を訴える方も多いです。

幸いにも近くに心療内科の先生がいて親身になって診察をしてくださっていますが、近くに適当な病院がない場合は以下の所に相談してみてください。

「ウクライナ交流センター」
東京・渋谷
開設日:2022年5月2日(月)
開設日時:火曜・金曜 10時から16時、土曜 12時から15時
場所:アイディアヒューマンサポートサービス ココロゴトSalon内
https://www.idear.co.jp/school/school-info/?id=486#access
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-9-10 KDC渋谷ビル1階
050-3612-7559
ukraine@mhea.or.jp大阪・梅田
開設日:2022年5月13日(金)
開設日時:不定期
場所:アイディアヒューマンサポートサービス 大阪梅田サロン内
https://www.idear.co.jp/school/school-info/?id=490#access
〒530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎1-4-5 エステムプラザ梅田202号
■横浜
横浜市国際交流センターYOKE横浜のYOKEにはウクライナカフェ「ドゥルージー」があります。(ドゥルージーは友だちという意味)ウクライナ人のスタッフが常駐しており、お茶やお菓子を無料で提供していただけて、様々な相談に乗ってくれます。通訳や就学の相談、アルバイトの紹介もしてもらえるそうです。

役所での手続き

国際移民局や区役所、市役所での登録手続きは、初期の頃はどの窓口も初めての経験で大混乱していました。ウクライナでは全ての公的手続きがインターネットでできるので、移民局、区や市役所、郵便局、銀行に足を運び、長い時間かけて並び、大量に書類を書かなければならない日本のシステムに彼らも私たちも悪戦苦闘しました。

特に「本人が日本語で書いてください」などというリクエストには困りました。試してみましたが、結局膨大な時間がかかると分かっていただき、次からはボランティアの代筆でも可となりました。1年経って、現在はかなり融通が効くようになりました。

最初に郵貯バンクでカードを作ることが多いと思うのですが、住居の近くの小さな郵便局だとほとんど経験がなく膨大に時間がかかり、記載ミスでまた翌日に出直しということもあります。できればその地域の本局に行かれることをお勧めします。

不在通知票

不在通知票が一番ネックです。保険証、銀行カードなど、留守の場合は郵便受けに不在通知票が入ります。ところが漢字が読めないし、他の膨大なチラシと紛れて大切なものだと分からず見逃してしまうケースが多発しました。

保険証は1年経つと自動的に新しいものが送られてきますが、それを受け取らずに古い保険証のままで受診すると全額支払うことになります。保管期限も切れていたので後日役所で再発行してもらうこともありました。

公共料金は自動引き落としの手続きをしますが、最初の数ヶ月はコンビニなどに自分で払いに行かなくてはなりません。それを忘れているのに私たちも気づかず、明日には電気が止まってしまうという場面で慌てて支払ったケースもありました。

対策 全員に不在通知票の画像をLINEで送り、これを見つけたら必ずボランティアに連絡してくれるように頼みました。それからトラブルはまだ発生していません。

日本で暮らすのに漢字は本当にハードルが高いです。

日本での食生活

  • 寿司 ウクライナでは寿司が大人気で、寿司の消費量は日本に次いで世界第2位だそうです。ただ日本のにぎりより、アボカドやツナ、エビ、クリームチーズなど、カリフォルニアロールのような寿司が中心で、寿司ロールのお店に行ってみたいそうです。
  • 蕎麦の実 日本に来てまもない頃、buckwheatはどこで買えるかと聞かれました。蕎麦粉ではなく蕎麦の実が必要なのだそうです。いくら探しても日本のスーパーには並んでおらず困っていました。調べてみるとネットで取り寄せるか輸入食材店に置いてある程度でしたので、とりあえず10キロ買ってみんなで分けてもらいました。お粥にしてミルクや蜂蜜をかけて食べたり、野菜や肉のスープに入れたり、繊維質と栄養が豊富で、体調維持には欠かせないもののようです。
  • ソース おにぎりパーティーや手巻き寿司パーティー、お好み焼きパーティーも開きました。お好み焼きや焼きそばはソースの味が好まれているようです。彼らは自宅でソースを使って焼きそばなどの調理もしていると聞きました、
  • 味噌汁 意外にも味噌汁は人気があります。ウクライナのお寿司屋さんでもよく食べていたようです。味噌を買って、豆腐や野菜の味噌汁などを作り、パックのご飯を温めて食べたりしているようです。

簡単にスーパーで手に入る日本の食材で作れるお料理教室を開くことも必要です。

コミュニケーションの取り方

個人的にですが、コミュニケーションに重宝したのがスマホの写真でした。日本の風景写真などを見せてからペットを飼ってたの?」「あなたの故郷の写真を見せて」などとお願いすると、彼らは喜んでスマホから愛犬や愛猫、そして故郷の風景写真などを見せてくれます。病院や役所での長い長い待ち時間に、意外にも写真で話が弾み、少しずつお互いを理解するきっかけになりました。

まりこ
まりこ

実家ではどんなペットを飼っていたの?

Elena
Elena

犬と猫とイグアナです。

ウクライナでは爬虫類も人気だそうです。

まとめ

彼らが日本に来た頃は、1年もすれば戦争も終わり、帰国の日も近いだろうと楽観的に考えていました。しかし未だに終戦の目処はたたず、破壊された街にはすぐ戻ることができそうにありません。

避難民本人も辛いですが、長期に渡るボランティアは相当な時間と労力がかかります。信頼できるメンバーとチームで関わるからこそできるボランティアだなと感じています。一人に負担がかかりすぎると続かないので、ぜひみんなで助け合ってボランティアをすることをおすすめします。

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