日本全国でクマの被害が報道される中で、被害が急増した2023年の10月の状況をまとめてみました。環境省の報告によると、今年10月末までに被害に遭ったのは180人、5人が死亡しているそうです。
北海道 登山中消防団員がクマに襲われ、その後大学生も襲われて死亡
10月31日 福島町の大千軒岳(標高1072m)で、10月31日午前、登山中の消防団員の3人がクマに襲われ2人がけがをしました。3人は午前7時半ごろから福島町から大千軒岳に登り始めました。3時間ほど登って休憩をしたとき、登山道を登ってくる体調1メートルほどの熊を見つけました。
3人は声を出して威嚇しましたが、熊は近づくのをやめず、40代の男性に馬乗りになって首や太ももを噛みました。そのはずみで隣にいた30代の男性は3.5メートル下の崖に転落して難を逃れました。一緒にいた40代の別の男性がナイフでクマの目を刺したところ、今度はクマはその男性に馬乗りになり、自分は死ぬかもしれないと思った男性はクマの首の辺りをナイフで刺したところ、やっと2人から離れました。その後2人でクマを蹴り続けたところ、ようやくクマを追い払うことができました。
同じ大千軒岳では、午後7時ごろ登山道の入り口で函館の20代の男性の車を見つかりました。携帯電話は通じるものの応答はありませんでした。男性は29日に一人で山に行くと家族に連絡していました。
大千軒岳で警察やハンターらが18人態勢で捜索にあたっていましたが、11月2日昼ごろ、標高600メートル付近で若い男性の遺体が発見されました。遺体の近くにはリュックサックがあり、男性の免許証が見つかっています。その後の捜査で、この男性は函館市に住む22歳の男性と判明しました。近くには、先日消防隊員を襲って怪我をさせたと見られるクマの死体が見つかりました。
青森県 リンゴやブドウの被害が続出
青森県の発表によると、今年のクマの出没件数は9月25日時点で480件とすでに例年と同数になっており、今後母グマが子グマの餌を求めて行動範囲を広げる恐れがあるそうです。県内では本年度、クマによる人身被害が6件あり、その内5件が津軽地方で発生しています。リンゴ農家は、今年は今までになく昼夜問わずクマが現れて、リンゴの収穫時期なのに連日クマ対策の作業ばかりしているとのことです。
10月30日 むつ市 神社で社殿が壊れているのが見つかり、周辺にはクマとみられる爪痕などが残されていました。大きくはがされた社殿の外壁の木の板、近くには爪痕やクマの毛のようなものがありました。クマが持って行ったのか社殿の中にはハチの巣の残骸のようなものがありました。10月19日の秋祭りの時には被害はなかったということです。
岩手県 ブナの実が大凶作
今年は福島を除く東北5県でクマの餌となるブナの実が大凶作です。
10月30日 奥州市 民家の納屋に立てこもり丸1日以上居続けていた体調1.5mほどのクマ。現場の近くでは数日前からクマの姿が見られていました。柿の木には毎日のように来ていたそうです。侵入から丸1日経った午後2時過ぎ、麻酔を吹き矢で打って眠ってしまったクマを、建物の中で捕獲したそうです。
秋田県 人身被害多発中
秋田県内ではことし、クマに襲われるなどしてけがをした人が30日までに61人、手術が必要な患者は10人、このうち、顔や頭を大けがをした患者はおよそ9割を占め、皮膚の広い範囲が裂けたり、骨折したりする被害が確認されています。
令和5年度 秋田県のツキノワグマによる人身被害状況一覧 出典:美の国あきたネット
10月9日 秋田市新家 住民5人が次々と襲われる被害が発生しました。家の敷地内で椅子に腰掛けて休んでいた男性が突然背後から突き飛ばされてケガをしました。周辺は郊外の住宅街でクマが住むような山もなく、40年近くこの場所に住んでいる被害男性も「クマが現れたという話は聞いたことがない。これからの時代、ここだから安心という場所がないのでは」と語っています。
10月19日 北秋田市 19時ごろ、クマはバス停でバスを待っていた女子高生を襲い左腕に噛みつき、さらに付近にいた80代の女性も攻撃し、頭や肩を負傷させました。
女性の悲鳴を近くで聞いていた男性によると「うちの店の前を若い女性がぎゃーっという声を出しながら走って行ったんです。今まで聞いたことのないような声に驚いて外に出たら、クマが出たということを別の人から聞いてびっくりしました」と語りましたが、この男性も1時間後にクマに襲われて病院に搬送されました。
北秋田市によると、被害発生後に市街地北側の川を渡って山に逃げるクマ一頭が目撃されています。北秋田市ではナシ園が荒らされて困っていましたが、こんな人の生活圏にまで出没するのは異常だそうです。
北秋田市農林課によると、「鷹の巣の市街地でこれだけのクマによる怪我人が出たのは初めてです。降雪期を迎えるまで、この異常な状況が続くのではないか」とのことです。
秋田県では10月18日時点でクマの出没件数が2,227件、2,790頭となっており、これは過去最高の数値であり、県は警戒を強めています。
10月24日 羽後町 秋田県南部の羽後町のゴルフ練習場では、24日午前7時、ボールを回収していた70代の女性がクマに襲われ、顔にけがをしました。一緒に作業をしていた男性が大声を上げながら球拾い用のカートを使ってクマを追い払ったそうです。
山形県 これから秋田県のように出没件数が増える恐れあり
最新の目撃件数及び過去の目撃件数について(令和5年10月15日現在)
山形県内では10月29日までにクマの目撃情報が660件に上っていて、過去20年で2番目に多く、クマが冬眠する12月中旬までは市街地などに出没する可能性が高いとして、県は警戒を呼びかけています。
里に下りてきたクマは秋ではなく春先や、もしかしたら昨年度からすでに集落周辺にいつも徘徊していて、本来であれば秋は山に行くはずだが、山に行かずに里の食べ物に依存してしまっている可能性はある。クマの行動が大胆になっている。季節の進み方は北東北の方が早いのでクマの出没傾向は早めに出ている。南にある山形県はもしかしたらこれから秋田県と同じような感じで出没が急増する可能性がある。
引用元:YBCニュースより
こうした生態の変化のほか、猟師の減少やクマの好物・ブナの実の大凶作が重なり、ことしは目撃件数が急増したと分析します。 また、隣県・秋田県ではクマによる人身被害が30日までに山形県のおよそ12倍に上る61人に上っています。 これから更に出没が増え、県内でも秋田県のように人身被害が多発する可能性もあると指摘します。
冬に入ってクマの冬眠が始まるまでのこれからの時期は、引き続きクマの出没に注意が必要です。
新潟県 クマ出没特別警報発令
新潟県では目撃や痕跡情報が900件以上に上っているのを受け、「クマ出没特別警報」を発令しました。これまでに7人の人身被害が確認されている新潟県ですが、3段階ある警戒レベルのうち、最も高い「クマ出没特別警報」を発令しました。
県の担当者によると、市街地に近いところまでクマが下りてきた。そこをつなぐヤブのようなクマの隠れ家となるような通路、草むら、そういったものがつながっていると、より人が住んでいるところに近づいて来ることになるので、そこへの対策のために予算を措置する予定だと語りました。
富山県 クマが住宅の中に侵入して女性が死亡
10月17日 富山市江本 午後9時40分ごろ、住宅敷地内で女性が死亡していました。近くにはクマの足跡があり、富山南署によると、女性は頭部とあごに切り傷があり、クマに襲われた可能性があると見ています。近所の小学校グラウンドには成獣1頭、幼獣2頭の足跡が発見されました。
10月31日 富山市加納 午前11時ごろ、住宅の中で女性2人がツキノワグマに襲われました。県によると、クマは玄関のガラス戸を破って住宅に侵入し、住人の75歳の女性が右腕と左ほおの骨を折理、親戚の37歳の女性が鎖骨を折るなどして重症です。2人とも意識のある状態で病院に運ばれました。
石川県 散歩中の人身被害も
10月9日 金沢市 午前6時すぎ、金沢市長坂町にある「大乗寺丘陵公園」で散歩をしていた80代の男性が、クマに襲われ、額や胸などにけがをしました。
10月11日 小松市 木場潟公園東園地内において、散歩中の男性がクマに遭遇し人身事故が発生しました。
山梨県 農作業中にクマに襲われ5分間格闘
10月25日 大月市 農作業をしていた70代男性は、振り向いたらクマに襲われ、5分間に渡る格闘となりました。男性は腕と足を噛まれるなど全治3週間のけがをしました。体調1メートルほどのメスのツキノワグマでした。畑にはクマの足跡がたくさん残っていた。小学校もそばにあり、近所の住民は外出も出来ない状況です。
10月31日 上野原市 午前10時40分ごろ、上野原市大野の県道で熊と車が衝突し、体長1.5メートルほどのクマは道路沿いの川に逃げ、車に乗った人に怪我はありませんでした。
京都府 登山道でクマに襲われてケガ
10月24日 比叡山 登山道で50代の女性がクマに襲われ、近くにいた男性が「助けて、助けて、助けて、熊に襲われた!」という声を聞いたそうです。山道から降りてきた青ざめた顔の女性は腕が血だらけ、指を噛まれ、左の耳も血だらけになっており、救急隊が駆けつけ病院で手当を受けました。
京都府では毎年1,000件ほどクマの出没状況があります。かつては絶滅危惧種として保護していたのですが、2021年から狩猟を解禁しました。しかし、解禁してから14頭しか捕獲していないそうです。経験のある漁師がいないことや、高齢化が影響しているそうです。
東京都・伊豆半島でも目撃情報が相次いでいる
10月18日 町田市 ハイキングコースとなっている境川源流付近でツキノワグマが目撃されています。登山者が鳴らしていたラジオの音に驚いてクマは逃げましたが、多摩地域ではクマの目撃情報が相次いでいます。都内にはツキノワグマが100頭ほど生息しており、生息域は東側に拡大しているそうです。
伊豆半島ではクマが絶滅したと言われていましたが、今年に入って相次いでクマが目撃されています。
人を恐れない〝新世代熊〟に注意 市街地でも平然、追い払い効果薄く
<野生熊の生態に詳しい福島大学食農学類・望月翔太准教授の話> 耕作放棄地など、人の手が入らない場所が増え、熊の活動範囲が広がったことで、人里に近い場所で生まれた「新世代熊」が増えている。生まれた時から車の音や人の話し声を聞き慣れていて、人里に降りてきやすい。農作業中、いきなり遭遇するリスクも大きく、注意が必要だ。 ただ、新世代熊であっても、人間に積極的に近づく可能性は低い。遭遇を避けるには、熊が普段聞くことがない鈴やラジオなどの音の出る物を携帯し、人が近くにいることを知らせるという基本を励行してほしい。 イヤホンを着けて農作業をしていると、周囲の異変に気付きにくい。農家は「いつ熊に遭遇してもおかしくない」と常に警戒しながら作業に当たってほしい。
引用元:日本農業新聞
各地で人身被害 秋にかけ要警戒
今年の熊による人身被害は既に全国で39人、10道県で確認されている。被害状況を取りまとめている環境省は今後、秋にかけて熊が餌を探し回るシーズンに入り、人身被害が増える恐れもあるとして、農作業を含め屋外での作業に警戒を促す。 同省の6月末時点の調査によると、被害人数の最多は岩手県の13人。秋田県の5人、北海道の3人など東北以北での被害が多かった。 その他、長野県で4人、島根で1人と本州各地で確認されている。北海道では1人が死亡した。 同省は「冬眠前の秋にかけて熊の行動が活発化する。人身被害が増える可能性もあり、これから一層、警戒が必要な時期に入る」(鳥獣保護管理室)と指摘する。
いま急増しているのが市街地での突然のクマとの遭遇です。
クマ被害を激減させたベアドッグの活躍
日本で有数のリゾート地軽井沢でも、以前はクマによって多くの被害を受けてきました。しかし、この12年間、人間の生活圏内でクマによる人身事故は起きていないのだそうです。その背景にあるのがベアドッグの活躍です。今全国でベアドッグに注目が集まっています。
ベアドッグとは、クマの匂いや気配を察知するための特別な訓練を受けた犬です。スタッフの指示に従い、大きな声で吠えたてて、クマを森の奥に追い払うことができます。
- 追払い ベアドッグの最も重要な仕事です。スタッフの指示に従い、大きな声で吠えて、人の居住エリア近くにいるクマを森の奥へ追い払います。クマは学習能力が高いため、追い払いを繰り返すうちに「いてはいけない場所」を理解するようになります。ベアドッグはクマに襲いかかることはせず、一定の距離を保つことが得意なので、クマも犬も傷つかずに済みます。
移動経路の特定 ベアドッグは、クマの匂いに反応するように訓練されています。住民の方などからの通報を受けて目撃現場に駆け付けた際、既にクマの姿が見当たらなくても、匂いでクマの移動経路を特定し、付近の安全を確認することができます。移動経路が分かれば、今後の侵入を防ぐことにつながります。
- スタッフの安全確保 電波発信器をつけていないクマが藪に潜んでいるような場合でも、匂いや音でクマの存在を察知して知らせてくれます。夜間を含め、スタッフは安全に活動することができます。
- 人とクマの親善大使 ピッキオでは、クマの生態を知り、被害を避けるための方法を学ぶ出張講座を行っています。ベアドッグはこのような場所に同席し、ヒトとクマとの共存を呼びかける親善大使の役割を担っています。
引用元:ピッキオhttps://npo.picchio.jp/dog/

クマを傷つけることなく森に返すことができれば一番いいですね。でも、根本的に餌が少ない状況をなんとかすることはできないでしょうか。
高速道路を走っていたり山や森に入って行くと、各所にソーラーパネルが設置してあるのを見かけます。最近は本当に増えたなと感じます。樹木を伐採してソーラーパネルを設置すると、当然野生動物の食料である木の実は減ります。街中に食べ物を求めてクマが出てきても当然かもしれませんね。

どんぐりの大凶作以外にも深い理由がたくさんあるのではないかと思います。
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